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「アストロシティ」第3シリーズの最近の展開

 というわけで、前回のエントリの続き。











 『アストロシティ:リフレクションズ』(ハードカヴァーとkindle版)





  ライター:カート・ビュシーク

  アーティスト:ブレント・アンダースン





 「アストロシティ」の現行の第3シリーズの、26号、29号、30号および32~34号を収録したのが『リフレクションズ』。この単行本は単独の長篇アークではなく、いくつかのエピソードが収録されています。「アストロシティ」のそもそもの最初のサマリタンの話のその後の他、地球に侵攻してくるエイリアンの惑星の、侵略組織の末端で平和に暮らす家族の話(これは設定からして非常に「アストロシティ」らしい話です)などがあります。

 さて、そんな中でも、この単行本で中心となっているのが、32~34号で展開される、『ターニシュト・エンジェル』の後日譚です。

 さて、『ターニシュト・エンジェル』の事件のなりゆきで私立探偵となったスティールジャックことカール・ダンウィズは、そのまま私立探偵として生計を立てていました。

 そんなカールの前に依頼者として現れたのは、カトラス……かつてカールを含む三人組のヴィラン集団「テリファイング・スリー」の女リーダーだった人物です。かつてカールは、ささいな行き違いを元にカトラスから制裁を受け、以来決別して会うこともありませんでした。そんなカールの元に訪れたカトラスの依頼とは、とっくの昔に犯罪からは足を洗ったにもかかわらず、カトラスと全く同じ手口の銀行強盗が現れ、見に覚えもないままに容疑者として警察から追われている、そんな謎めいた状況の解明であるのでした……。





 ……とまあ、そんなストーリーが展開されるわけですが……正直なところ、『ターニシュト・エンジェル』に比べるとだいぶ落ちるものなので、「そもそもこの後日譚って必要だったのかなあ?」とまで思えてしまうのでした。

 『ターニシュト・エンジェル』の場合、過去に囚われた人物としてのスティールジャックが挑む事件の黒幕が、スティールジャックとは異なる形で過去に囚われた人物で、両者の運命が交錯しつつ、思い通りに行かない人生の浮き沈み、その陰影が描かれるさまがなんともすばらしかったのですが……この後日譚になると、スティールジャックは、私立探偵として生計を立てることによって、安らぎと居場所を既に獲得していることが前提になっているので、特に陰影と悲哀とかはないんですよねえ。

 今回の事件の黒幕にしても、過去の因縁とかがある相手ではないことが早々に明らかになります。スティールジャックやカトラスに執着しているのが、過去の有名ヴィランに対するファンボーイ的視点を持つ人物だと言うことで、そういう意味では一種メタ的な話ではあるんですが、それにしてもぺらぺらな話だよなあ、と。





 ……まあ、カート・ビュシークの健康状態の悪さゆえに「アストロシティ」が長期中断することはたびたびあったので、そういう意味では、ほぼ月刊ペースを保って現行の第シリーズがきちんと刊行されていること時点で喜ぶべきなのかもしれませんが……(ただし、アートはブレント・アンダースンが担当しないことも増えてきました)。やはり、「アストロシティ」という作品自体が、さすがに、ヒーローコミックにおける歴史的役割は既に完全に果たし終えたのかなあ、とも最近は思えてきました。

 現行シリーズの作品を読んでいて、例えば、初期から登場していたが細かく描写されているわけではなかったキャラクターを中心に据えた話が出てきても、初出の時点と照らし合わせてきちんと辻褄が合っていたりするわけです。つまり、「アストロシティ」は、初期の段階でチョイ役程度だったキャラクターにも詳細な設定が確定しており、それをきちんと展開するだけでいくらでも続きは語れる、ということなんでしょう。しかしそれは、初期の時点で確定していた作品世界が良くも悪くもそのままのクオリティで展開していくということなのであって、作品世界の根本的な変質はそもそも望めない、ということでもあります。

 ……とはいえ、特にこの『リフレクションズ』以降の展開を読んでいると、さすがにこの「アストロシティ」も話をたたみにかかったように思える展開が出てきてもいます。

 例えば、35号と36号で語られるのは……遂にというか、最初期から登場しているヒーロー、ジャック・イン・ザ・ボックスの詳細な来歴です。親子二代およびサイドキックからの昇格、都合三代に渡って継承されてきたジャック・イン・ザ・ボックスの来歴が、おそらくは四代目を継承するであろうサイドキックの少年の視点から語られることになります。

 一方、39号と40号で語られるのは、最初の単行本『ライフ・イン・ザ・ビッグ・シティ』に登場した、シャドウヒルに暮らす一般人の視点からアストロシティの得意なあり方を語ることになったマルタという女性の、二十年後のお話。独立し、経済的に豊かになりながらも依然としてシャドウヒルに暮らすマルタの元に、ある日助けを求めて訪れたのは、なんとハングドマンだった……。

 ……なんというか、いよいよハングドマンのオリジン(というか、厳密には、ハングドマンがどのようにして存在しているのかの本質を明かしつつ語られる、「現行のハングドマン」のオリジン)まで言及されてしまうということで、いよいよ本当に「アストロシティ」にも終わりが近づいているのではないかと感じた次第なのでした。










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