Latest Entries

「奇書探訪」シリーズを中止します

 このブログで続けていた「奇書探訪」シリーズを中止することにしました。
 もともとこのシリーズは、難解だとされて敬遠されがちな書物を容易に読みほぐせるように解説・紹介するためにやっていました。つまり、意識的に読みやすく・わかりやすいようにハードルを下げて文章を書いていたわけです。……なんですが、そうすると、自分がすいすいと読み通せることで「自分の方がわかっている」と勘違いしたのか、謎の上から目線でダメ出ししてくる(その実、その内容はろくな知識もなくめちゃくちゃ)ような輩が増えてきました。……アホか。こっちが、テメーら程度のもんでも読めるようにレヴェルを落としてやってんだよ。
 少し前にボルヘスについて書いたエントリは、奇書探訪シリーズではなかったんですが、自分の中で、読みやすい文章を心がける癖がついていたことが災いしたのか……ボルヘスなんぞよりはるかに偉いノヴァーリスやホフマンについて書いていてもアクセス数は少なかったのに、インテリごっこに興じたいようなわけのわからん連中が押し寄せてくることになりました(……まあ、要するに、ボルヘスがそういう作家だということなんでしょうが……)。
 そうした連中が、自分では知的なことを書いているつもりなのか、てんで見当はずれの勘違い発言を、わざわざリンクをはったりブックマークをしたりコメント欄に書き込んだりして誇示してきたわけです。
 例えば、twitterからは次のようなのがあります。


くぼた(弱) @kbtysk33  ·  3月1日

ボルヘスに問題があるとすればそれはモダニズムの問題というより極めて近代的な小説というジャンルを中世的叙事詩としてあくまで捉えていたということにあるのではないかな。まあそれをモダニズムの問題と言えば言えるだろうが……


くぼた(弱) @kbtysk33  ·  3月1日

まあ難しくてわからんのですが


くぼた(弱) @kbtysk33  ·  3月1日

でもボルヘスの神曲論には問題はないと思うんだけどな。(ケチをつけるとしたら他のところだろう)ここが物足りないって話をしても…って感じだし


 人が、「Aだと思う。なぜなら、こうこうこういう理由があるからだ」と述べることに対する反論は、「Aではないと思う。なぜなら、こうこうこうだからだ」というものだ。「Aではない、Bだ」って、なによ? いきなり人の考えを全否定しておいて、Aではないことの論証もなければ、Bであることの論証もなし。テメー何様だよ? 自分の考えを誇示するために他人をダシにしてんじゃねーよ。
 だいたいさあ、ボルヘスはジョイスを評して、詩ではなく小説を書いたことで才能を浪費したと明言してるけどね(『ボルヘスのイギリス文学講義』p144)。こういう人が小説を詩として捉えていたとか言われても、意味がわからん。一方、『フィネガンズ・ウェイク』に関しては、ジョイスのやろうとしていることは既にキャロルが全部やっているとか書いている。だから、ボルヘスは実は、カントの『判断力批判』で美と崇高の峻別が理論化されたりエドマンド・バークの崇高論がゴシック・ロマンスの展開に影響を与えたりしたことで文学に流れ込んだ、モダニズムの価値観がよくわかっていなかったんじゃないかと言っているわけだよ。こういうことを前提とした考えが違うと言うのなら、「ボルヘスのモダニズム理解は完璧だった」ということを、具体的な文献に即してやれっちゅー話だよ。


 ……それと、なに、「ボルヘスの神曲論には問題はない」? なに言ってんの? 最初っから「問題がある(=欠陥・誤謬を内包する)」なんて書いてねーよ。「ボルヘスの『神曲』論が異様につまらなかった」→「この書物はこうこうこういう構成になっている」→「ところで、ボルヘスの文学観がこのようなものだとすると、ボルヘスの小説の実作は、20世紀の現代文学としてはこのような問題があるのではなかろうか」という流れの議論をしてるんだよ。な~にが「ケチをつけるとしたら他のところだろう」だよ。そもそもテメーがこんな簡単な文章の論旨を追うことすらできてねーんだよ。
 ……「まあ難しくてわからんのですが」、だと? だったらハナっから黙ってろや。


 ……え~、ということですので、難解すぎたり煩雑すぎたりする話に踏み込まずに、ある程度わかりやすく見通しがとりやすい話に終始すると、自分の方がわかっていると勘違いしたわけのわからない輩が押しかけてきて、謎の「おれ理論」を振りかざしだすということがわかりました。さすがに何度もそういうことを繰り返された結果として辟易しましたので、今後、文学や思想・哲学に関して書くときは、難易度を落とさないことにします。そのため、「奇書探訪」シリーズも中止となりますので、ご了承ください。……逆に、ハードルを下げないで書いた『「ボヴァリー夫人」論』に関するエントリなんかに関しては、こちらとしても有益な評が寄せられる、ということもありますしねえ。





関連記事


コメント

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

以前「破壊と変容――大江健三郎『われらの狂気を生き延びる道を教えよ』」にコメントした者です。このシリーズ、終えられるのですね。発想豊かな的確かつ鋭い指摘でいつも楽しみにしておりましたので、残念です(読むだけでコメントもせずにこう申し上げるのも恐縮なのですが)。

ちなみに、当方RSSフィードに登録して貴ブログを購読しております。それだとアクセス数にカウントされないのかも知れませんね(詳しいことはわかりませんが……)。このご時世、ブログはRSSフィードに登録して購読しているわたしのような方も、けっこういらっしゃるのではないかな、と予想しているのですが。

もちろん、本気モードのエントリも楽しみにお待ちしております。

とにかく、お疲れ様でした。とりとめもないですが、一読者として、感謝を!

Re: タイトルなし

 コメントを頂いたお二方、ありがとうございました。

>塩見さん

 以前のエントリもアクセス自体はあったのですが、ボルヘスに関するエントリが、今までの水準からするといきなり急激に増えたということですね。その上で、わざわざリンクを貼ったりしたうえで、半可通の生煮え知識に基づいてデタラメを並べるような輩が続出したということです。

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://howardhoax.blog.fc2.com/tb.php/167-710d9656

この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

«  | ホーム |  »

このブログについて

 ・毎月第1・第3土曜日に更新しています。それ以外にも不定期に更新していますので、月に2~3回程度の頻度で新しい記事を載せています。


 ・コメント欄は承認制です。管理者の直接の知人でもないのにタメ口で書き込まれたようなコメントは承認しませんのであしからず。


 ・なにか連絡事項のある方は、howardhoax(アットマーク)yahoo.co.jpまでどうぞ。

 

プロフィール

Author:Howard Hoax
 読んだ本、見た映画の感想をつづるブログ。基本的にネタバレありです。

 

全記事表示リンク

広告

 

最新コメント

カテゴリ

月別アーカイブ

広告

 

検索フォーム

 

 

RSSリンクの表示

リンク

QRコード

 

QR